Visual EXPO 2026レポート|それっぽい映像を超えるには? AIにブランドらしい選び方を持たせる方法[資料DL可]
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この記事でわかること
- Visual EXPO 2026の審査員トークや受賞作品から見えた、これからの映像表現に求められる価値
- 企業の“人格”を捉え、AIにブランドらしい「選び方」を持たせるための3つのステップ
- AIに任せる領域と人が担う領域をどう分け、クリエイティブの質を高めていくか
- アマナが登壇したセッション「AIでブランドらしい映像は作れるのか? ―企業の人格を定義し、映像まで拡張する方法―」の資料を本記事からダウンロードできます
生成AIによって、映像制作を取り巻く環境は大きく変わっています。企画段階のビジュアル制作から動画生成、編集まで、これまで多くの時間や工程を必要としていた作業を、AIが担えるようになってきました。
では、映像を「つくれる」ようになった先で、企業は何を考えるべきなのでしょうか。
2026年9月28日、29日に開催された「Visual EXPO by BRANDED SHORTS 2026」では、ブランデッドムービーを中心に、広告クリエイティブや生成AI、地域創生など、映像とビジネスの現在地をめぐる多様な議論が交わされました。会場では、7つのセミナーや企業・自治体12団体によるブース展示、上映、アワードセレモニーなどが行われました。
その中でアマナのAI専門組織「A³(amana AI architects)」は、「AIでブランドらしい映像は作れるのか?」をテーマに登壇。AIを活用しながら企業の“人格”を捉え、ブランド固有の表現へと落とし込むプロセスを、実際の映像制作を通じて紹介しました。
本記事では、Visual EXPOで語られた映像表現の潮流とともに、A³のセッションから「AIでブランドらしい映像をつくる」ための考え方を紐解きます。



映像表現はどこへ向かう? Visual EXPO 2026から見えた現在地
「BRANDED SHORTS」は、企業やブランドのブランディング映像「ブランデッドムービー」に光を当ててきた取り組みです。11年目を迎えた2026年は、ブランド戦略や人材育成、ビジネスマッチングまで領域を広げ、「Visual EXPO by BRANDED SHORTS」へと進化しました。
なかでも注目したいのが、「BRANDED SHORTS 2026」アワード。アワード発表前の審査員トークイベントでは、審査委員長の樋口景一氏をはじめ、映画監督の天野千尋氏、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏ら5名が、今年のノミネート作品を振り返りながら、映像表現の変化やブランデッドムービーに求められる価値について議論しました。

話題の一つとなったのが、映像を取り巻く視聴環境の変化です。
宮田氏は、若い世代のクリエイターとの制作経験を例に、1秒にも満たない単位でカットのリズムを調整しなければ「スワイプに負ける」という現在の動画表現について紹介しました。SNSでは、短時間で注意を引く表現がますます研ぎ澄まされています。
その一方で語られたのが、「シェアードバリュー(共有される価値)」です。瞬間的に目を引くだけではなく、見る人の心に深く入り込み、価値や問いが残っていく。そうした映像の重要性も改めて浮かび上がりました。
それを象徴するのが、「Branded Shorts of the Year 2026」を受賞した2作品です。
ナショナル部門の公益社団法人Marriage For All Japan『誰も悪くないのにね』は、同性婚をめぐる家族の葛藤を、誰かを「悪者」にすることなく描きました。ポジティブなメッセージで複雑さを覆い隠すのではなく、その「ざらつき」も含めて提示することで、見る側に考える余地を残しています。
出典:マリフォーチャンネル Marriage For All Japan -婚姻の平等 同性婚-
インターナショナル部門のcheckyourbreasts.today『触ってみて(Feel)』は、乳がんのセルフチェックをテーマにした作品です。危機感を強く訴えるのではなく、「触れる」という身体感覚を美しい映像で描きながら、自分自身の身体に触れることへと自然につなげています。
出典:Judith Veenendaal/'Feel' - checkyourbreasts.today
2作品に共通するのは、メッセージを一方的に言い切るのではなく、見る側が感じ、考える余地を残していることです。
視聴環境や映像技術が変わり、表現の選択肢が増えるほど、「何を使うか」だけではなく、「何を、どのような形で人の心に残すのか」が問われています。
そして、この問いは生成AIを活用した映像制作にもつながります。
AIで映像は作れる。でも「その企業らしい」とは限らない
Visual EXPOでアマナが行ったセッションのテーマは、「AIでブランドらしい映像は作れるのか? 企業の人格を定義し、映像まで拡張する方法」。
登壇したのは、A³を率いるデパートメントマネージャー/エグゼクティブプロデューサーの林宏介と、アートディレクター/プロンプトアーキテクトのコンスタンス リカです。

林は、アマナグループでAIを業務や事業に取り入れる取り組みを統括。コンスタンスは、生成AIのプロンプト設計やAIシステムの構築を専門とし、企業のブランドらしさを表現へ翻訳しています。
セッションの出発点となったのは、生成AIによって映像を「つくる」ハードルが大きく下がったという変化です。
絵コンテやVコンを短時間で複数案つくり、画像や動画を生成する。さらにAIエージェントと各種生成AIサービスを組み合わせれば、自然言語による指示から編集まで進められる段階に来ています。
一方で、制作が容易になるにつれて、新たな課題も見えてきました。
AIに企業情報を与えれば、「それらしい」映像はつくれます。しかし、最後のロゴをほかの企業に置き換えても成立するような表現では、本当にその企業らしいとは言い切れません。
林は、その原因を「AIが企業らしさを知らない」ことだけに求めず、「そもそも企業自身が“企業らしさ”を十分に定義してこなかったのではないか」と問いかけます。

Web黎明期より、大手企業の広告プロモーションからCX(顧客体験)設計まで幅広く従事。 前職では取締役としてクリエイティブ組織を管掌し、展示体験やAI領域へ事業を拡大。カンヌライオンズやACCグランプリなど国内外のアワードを多数受賞。 現在は経営視点と技術知見を基に、アマナのクリエイティビティとAI技術を融合。企業のブランド体験を革新するソリューション開発と、次世代の表現創出を推進する。
そこでA³が提示したのが、人の経験や感覚に依存していた「企業らしさ」を言葉と基準へ変換し、AIにも扱える判断軸にするという考え方です。
今回のセッションでは、その方法を検証するため、アマナ自身を題材にブランデッドムービーを制作。「人格を、発見する」「人格を、表現する」「人格を、語る」という3つのステップで、企業の人格を映像へと拡張していきました。
まず企業の人格を言葉にし、それをもとに表現の方向を設計する。そして最後に、世界観へ時間と展開を与え、映像として語っていく。以降では、この3つのステップに沿って、そのプロセスを見ていきます。
はじめに、こちらの制作プロセスを経ずに制作したムービーをご覧ください。
アマナ自身を題材に制作したブランデッドムービー(ビフォー)
STEP1:「人格」を発見する――企業らしさを言葉にする
では、AIに伝えるべき「企業らしさ」とは何でしょうか。
A³では企業の人格を、「信念」「実績」「気質」「表現」「美意識」という5つの要素から捉えます。理念や実績、組織文化、これまでの表現だけでなく、「何を良しとし、何を選ばないか」という明文化されにくい美意識まで含めて読み解く考え方です。

今回の実験では、アマナ自身のブランデッドムービーをつくるため、自社のクレデンシャル(会社紹介・実績資料)やガイドラインなどをAIに読み込ませ、人格を形づくる手がかりを抽出しました。
そこで浮かび上がったのが、「ノイズ」「Emotional & Professional」「Cutting Edge」といった言葉です。
ただし、AIが抽出した言葉をそのまま「企業らしさ」とするわけではありません。
その企業にとって、その言葉が何を意味するのかを人が読み解く必要があります。今回のアマナでは、たとえば「ノイズ」を単なる「雑音」と捉えるのではなく、「当たり前の見方を揺さぶる」と解釈しました。同じように、「写真から始まった」は「見ることを仕事にしてきた」、「Emotional & Professional」は「感性で見て、技術で魅せる」、「美意識」は「何を魅せないかを選ぶ」と読み替えていきます。
AIは大量の情報から特徴を見つけられます。しかし、その特徴が企業にとって本当は何を意味しているのかを読み解くところには、人の判断が必要です。

STEP1でつくるのは完成した表現ではなく、「どの表現を選ぶのか」を判断するための基準です。
STEP2:AIに「ブランドらしい選び方」を持たせる
企業の人格を言語化しても、それだけでブランド固有の表現が生まれるわけではありません。生成AIは、学習した世界の「典型」に引かれやすく、指示が曖昧であるほど既視感のある表現へ戻りやすいからです。
セッションでは、その状態を「それっぽい。でも、誰のものでもない。」と表現しました。
そこでA³が重視するのが、AIに何を生成させるかではなく、「どの方向を選ばせるか」を設計することです。

まず、AIが導きやすい典型的な表現をあえて可視化し、選択肢から外します。「課題→挑戦→成功」という展開、多様な人々のモンタージュ、最後に「未来へ。」といったメッセージを置く構成など、AIが最初に選びそうな「ありそうな答え」を把握し、そのまま採用しません。そのうえで、企業の人格を手がかりに別の具体を探します。
次に、「固定するもの」と「自由に探索するもの」を分けます。信念や美意識、選ばない表現など、ブランドの人格に関わる部分は固定します。一方で、舞台やモチーフ、構図、カメラ、メタファー、演出などはAIに探索させます。「WHO」は固定し、「HOW」は自由にするという考え方です。
さらに、表現の方向性を「つまみ」として設計します。たとえば、現実/異世界、ドキュメンタリー/詩的、静的/動的といった軸です。「もっと大胆に」と曖昧に指示するのではなく、どちらの方向へ、どの程度振るのかを人が調整することで、AIが探索する表現の幅を広げます。

もう一つ重要なのが、企業を表す言葉をそのままビジュアルへ直訳しないことです。たとえば、「持続可能性」を木や地球、「革新」をネオンや未来都市で表現するだけでは、その企業である必然性は生まれません。
そこで、企業の実体から意味を読み、一度抽象化したうえで、そのブランドならではの物語や世界、モチーフへ具体化していきます。
今回のアマナでいえば、「Cutting Edge」を「最先端の技術」ではなく、「新しい見方を生み出すこと」と捉え直したのがその一例です。
A³は、こうした考え方を「禁じる」「分ける」「広げる」「翻訳する」の4つに整理しました。
その先にあるのが、「AI Direction=生成を指示することではなく、選択の方向を設計すること」という考え方です。
STEP3:世界観に「時間」を与え、映像へと変える
ここまでで生まれたのは、企業の人格を反映した「世界観」です。
しかし、映像にするためには、その世界の中で何かが起こり、変化する必要があります。静止画では一枚としての「完成度」が重要ですが、映像の起点では、その先へどれだけ展開できるかという「展開力」が重視されます。
そこでSTEP3では、世界観に「時間」を与え、「何を見せ、どう変化させ、どこへ着地させるか」を考えていきます。
今回のアマナの映像で採用したのは、前後のカットを形や光などの共通要素でつなぐ「マッチカット」です。
アマナは、さまざまな企業やブランドに合わせて表現を変えていくクリエイティブ会社です。そのため、一つのストーリーに収束させるより、異なる世界を行き来しながら「表現の振れ幅」を見せる方がアマナの人格に合うと判断しました。これは、「人格は固定する。表現は自由にする」という考え方を、映像の構造にも反映したものです。

また、映像の軸となった表現の一つが、強い明暗によって奥行きや立体感を生み出す「キアロスクーロ」です。
出発点は、アマナが写真を原点としてきた会社であるという事実でした。それをカメラやスタジオとして直訳するのではなく、「写真=光で描くこと」と捉え、そこから「光と影」へ展開しました。「直訳なら、カメラを映す。翻訳なら、光だけを残す。」という発想です。

このように今回の映像は、AIに「アマナらしい映像をつくって」と任せて生まれたものではありません。アマナ固有の「選び方」をAIにも扱える形にし、それを映像表現までつないだ結果です。
アマナ自身を題材に、プロセスを経て制作したブランデッドムービー(アフター)
AIは「描く」のではなく「埋める」。人に残る仕事とは
今回の制作からは、AIが得意なことと、人が担うべきことの違いも見えてきました。
コンスタンスによれば、言語化できる領域ではAIが比較的高い精度で応えられる一方、「間」や「空気感」、気持ちのいい編集タイミングなど、言葉にしにくい感覚の再現にはまだ難しさがあります。

ダイナミックなビジュアルデザインスキルとグローバルな感性で、インパクトと意味のある体験を生み出す。既成概念に新しい視点と変化を与える事で、新たな価値を創造することを目指し、デジタルブランディングとビジュアルプロトタイピングを中心に様々なプロジェクトに取り組んでいるクリエイティブ錬金術師。
セッションの最後に、林は人とAIの役割を「人が枠をつくる → AIが中身を埋める → 人が仕上げる」という3段階で整理しました。
何を表現し、何を守るのか。まず、人が設計図とガードレールをつくります。その枠の中でAIが、速度と物量を生かして可能性を広げる。そして最後に、人が何を選び、何を削るのかを判断し、必要であれば撮影やCGも使いながら品質を高めます。
林は、この関係を「AIは『描く』のではなく『埋める』道具である」と表現します。

また、AIが生成や展開を担うことで、クリエイターは最後の仕上げや細部へのこだわりに、より多くの力を使えるようになります。
一方で、AIは一度指示すれば思い通りの結果が出る、単純なツールではありません。出力を見ながらパラメータを動かし、どこまで振れば狙った表現になるのかを確かめ、選択と調整を繰り返す必要があります。
そうした試行錯誤の中でAIの特性や癖を理解し、自分たちなりの使い方を手に馴染ませていく。いわば、AIの扱い方そのものをクリエイターが身体化していくことも重要になります。
AIを突き詰めていくほど、使う側の判断や経験がアウトプットの差として現れます。だからこそ、クリエイティブ会社には「何ができるか」だけでなく、「何を任せるのか」「何を任せないのか」「何を良しとするのか」まで含めて、AIと向き合い続けることが求められます。

AI時代、「ブランドらしさ」は何を選ぶかに表れる
生成AIによって、映像をつくるための手段は急速に広がっています。だからこそ、これから差が生まれるのは「つくれるかどうか」ではなく、数ある可能性の中から何を選び、何を選ばないか。その判断に、どれだけブランド固有の理由を持てるかではないでしょうか。
今回A³が示したのは、AIに「ブランドらしい映像」を任せる方法ではありません。企業の中にある信念や美意識を掘り起こし、判断の基準をつくり、その「選び方」をAIと共有する。AIの力を借りながらも、表現の軸そのものは人がつくるというアプローチです。
AIを使えること自体ではなく、使い込みながらブランド固有の「選び方」を磨いていく。そこに、クリエイティブ会社がAIと向き合う意味があります。
企業の人格をどう捉え、どのようにAIへ渡し、映像表現までつなげていくのか。今回のセッションで紹介した3つのステップや具体的なディレクション方法は、以下の資料で詳しくご覧いただけます。
【無料】『AIでブランドらしい映像は作れるのか?』Visual Expo 2026 登壇資料をダウンロード
・アマナのサービス紹介
プランニング&デザイン|A³ | amana AI Architects
ブランドの「らしさ」を軸に、生成AIを活用したクリエイティブ設計・制作プロセスを構築。
ブランド戦略から表現設計、PoCまで一貫して支援します。
A³ | amana AI Architects 資料ダウンロードはこちら
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取材撮影:INFOTO







