お客様向け
既存または新規のお客様からの商品やサービスに関するお問合わせ、お取引のご依頼、ご相談はこちらから。
人気のキーワードで検索
フィルタ
このような方にオススメです最新テクノロジーとクリエイティブを融合させた映像制作の事例を探している広告代理店・プロダクションの方「AI×実写」のハイブリッドな表現手法を活用した撮影の裏側に関心がある方新しい映像表現のヒントや、明日の実務にすぐ活かせる実践的なナレッジを得たい方
1997 東京都生まれ2020 武蔵大学 経済学部卒業2020 株式会社アマナフォトグラフィ入社2023- 株式会社アマナ所属フォトグラファーである父の影響から、「グラフィック・ムービー」双方における活動をはじめる。学生時代からジャンルに捉われないビジュアル制作に注力、同年代のクリエイティブと共に写真と映像領域の垣根を超えた制作活動を行う。アマナ入社後は秦和真氏や関口尚志氏に師事3年間のチーフアシスタントを経てフォトグラファーに昇格。動的な視点で断片を切り取り、紡いでいく、ストーリー性のある画作りと構成を得意とする。「実写にしかできない表現」をフォトグラファーとして常に根幹に、新たなビジュアル領域としての AIも積極的に取り込む「AI×実写」にしかできないビジュアルがあり、生み出す人、見る人、人の心に残るビジュアル制作を常に心掛けている。
学生時代から映像制作に携わり、主に実写・CGを中心とした映像表現を学ぶ。その後、株式会社TYOに入社し、約6年間にわたりCM・映像制作に従事。広告映像制作における企画から撮影、編集、制作進行までの基本を経験する。TYO退社後はフリーランスとして、MVやWebCMを中心に幅広い映像制作に携わり、企画立案から制作進行、現場対応まで一貫してプロジェクトを推進。2025年より株式会社アマナに入社。これまでの経験を活かし、企画立案から制作進行、現場対応までワンストップで対応できることを強みとしている。特に、新規性の高いコンテンツ制作や、映像・CG・グラフィックなど複数領域を横断するプロジェクトの推進を得意とする。また、SNS・Webを含む各プラットフォームの特性を踏まえた企画提案にも取り組み、話題性とクオリティを両立したコンテンツ制作を目指している。
毎年、バルセロナのDisseny Hub Barcelonaで開催されている世界最大級のデジタルデザイン・フェスティバル「OFFF Barcelona」は、今年で26回目を迎えました。常に最先端のデジタル表現を追求してきたこのイベントが、今回、提示したのは、モーショングラフィックス、生成AI、インタラクティブアートの最前線です。しかし、それは単なる表現トレンドの更新ではなく、「ブランディングが、もはや固定的なビジュアルに基づくものではなく、変化し続ける存在へと変容した」という、大前提そのものの転換でした。ここでは、OFFF 2026で提示された表現の潮流を「ブランディング設計の新ルール」として読み解き、これからの時代に、ブランドはいかにして一貫性を保つべきかを考えます。ブランドは「培養」される時代へOFFF BarcelonaのOFFFとは、元々、「Online Flash Film Festival」の略でした。Flashとは、2000年前後にインタラクティブコンテンツやWebアニメーション制作の中心技術だったMacromedia Flash(後のAdobe Flash)を指します。そのFlashは今や過去の遺物となりましたが、OFFF Barcelona自体は名称を変更することなく、現代のクリエイティブ関連のものとしては世界最大級の国際イベントへと発展しました。まず、今年のOFFF Barcelonaを象徴していたのは、参加者のIDタグのデザインにも応用されたフェスティバル自身のビジュアルアイデンティティです。OFFF Barcelona 2026 'Cultured' campaign by UncommonCulturedプロジェクトによって「培養」されたOFFF Barcelonaのロゴイメージ「Cultured(「培養された」と「文化がある」のダブルミーニング)」と名付けられたこのビジュアルアイデンティティは、イギリスのUncommon Creative Studioが手がけました。彼らは、事前にロンドンとニューヨークのスタジオにクリエイターたちを招いて交流イベントを開き、グラスや皿、エレベーターの階床ボタンなどの表面に残った指紋や皮膚片、服の繊維、バクテリアなどを収集したのです。それらを元に、アーティストのMould Queen(カビの女王)ことDasha Plesenがカビを培養し、その形状や質感を、OFFF Barcelonaで使用されるフォントやビジュアルアイデンティティ全体に応用しました。この過程は、こちらの動画で確認することができます。 Uncommon Creative Studio/OFFF '26 Reveal Filmこの「Cultured」の根底にあるのは、ブランドアイデンティティを固定的なデザインで規定するのではなく、「生成の条件」を設計し、そこから育つ無数のバリエーションすべてをアイデンティティとして扱う、つまり、「ブランドが培養される」という考え方です。イギリスの国際的なクリエイティブメディアであるPeople of Printは「(Culturedプロジェクトは)クリエイティブを、デザインされるものではなく育てられるものとして位置づけた」と評し、新たなブランディングの在り方が示唆されました。これは、イベントの公式メッセージである「クリエイティビティは、生きた協働的なコミュニティから集められた参照・アイデア・視点を、執拗に収集しキュレーションすることで形づくられる」にも呼応するものです。それでは、ブランドが培養されるものだとすれば、企業のブランディング設計はどう変わるべきなのでしょうか?ここからは、OFFF Barcelonaで示されたその方向性を、3つの潮流に整理し、紹介していきます。OFFF Barcelona 2026で顕在化した3つの表現トレンド1. モーショングラフィックスが主役になった今年のOFFF Barcelonaにおける最大の公開プログラムは、2年目を迎えたファサードのプロジェクションマッピング企画「The Screen」でした。イベント主宰者とベルギーの3DスタジオFrameboyが共同で制作し、3夜連続でメイン会場のDisseny Hub Barcelonaの建物外壁を使って上映されたこのモーショングラフィックスアートは、イベント参加者以外でも無料で観覧できました。まず、Laundry Studiosによって制作された約9分のメインタイトル映像が、変化し続けるタイポグラフィと色彩によって登壇者たちを讃え、その後に、735もの国際的な応募作品から選出された280作品が続きました。この企画によってOFFF Barcelonaは、モーショングラフィックスがもはや特別な表現手段ではなく、視覚表現の主流になりつつあることを印象づけたといえるでしょう。 OFFF Festival/OFFF Barcelona 2026 'The Screen' mapping aftermovie2. 生成AIはツールを超えて制作プロセスそのものにそのThe Screenに映像出展したバルセロナのOnion Labによる「Ciutat Contínua」は、生成AIの支援によってバルセロナの建築的アイデンティティを横断・再解釈する連続的なシーケンスを生成した作品でした。また、新人発掘プログラムのNXTには、リサーチ、アイデア出し、アニメーション、プレゼンテーションまでのほぼ全工程に生成AIを用いた実験的プロジェクト「90% AI」も含まれていました。先のPeople of Printが「AIは、ほぼすべての話題に忍び込んでいた」と記したように、生成AIは特殊なトピックではなく、制作プロセスの重要な前提になりつつあると考えてよいでしょう。3. 有機的・インタラクティブな表現の広がり同じくThe Screenに出展したSomniaLabの「Cartography of Touch」は、ダンサーたちの手の動きが建築のファサードに触れて彫刻するように見える錯視的なパフォーマンス映像によって、身体と建築の相互作用を描きました。実際の講演プログラムにも、日本のチームラボ、アメリカのVolvox Labs、カナダのMoment Factory、同じくカナダのSilent Partners Studioといった体験型・没入型のクリエイティブスタジオが登壇し、「静止した完成品」ではなく「観客との関係の中で変化し続ける表現」が主流になってきたことを示したといえます。SomniaLab「Cartography of Touch」は、ダンサーと会場ビルのファサードの動きを連動させ、身体と建築の相互作用を描きだした(SomniaLabの公式サイトより)これらの3つの表現トレンドに共通するのは、アウトプットの完成形が1つに定まらないという点です。そして、それが、これからの企業ブランディングにも大きな影響を与えていくものと予想されます。OFFF Barcelona 2026では、このような3つの表現トレンドが顕在化した。 「制御」の対象が変わったことによる静的ガイドラインの限界OFFF Barcelonaで提示された潮流を踏まえると、従来の静的なブランドガイドラインに限界が訪れつつあることが読み取れます。そうしたガイドラインは、ロゴのサイズや縦横比、カラー、余白、書体などの「静止した状態」を規定するものでした。しかし、表現の主戦場がモーショングラフィックス、生成AI、インタラクションへ移っていくと、静的なルールブックは必然的に制御すべき対象そのものを見失っていきます。もしも、ロゴの動き方がバラバラだったり、AIが生成するビジュアルの方向性が毎回異なっていれば、受け手の中にブランドイメージが蓄積されにくくなることは、容易に想像がつくでしょう。会期中の話題の中心も、「生成AIによって誰もが同じ参照元から作れる時代に、差を生むのは何か?」という問いでした。つまり、無数のバリエーションが瞬時に作れる時代のブランドの競争力は、どこにあるのかということです。こうした疑問に対して、Uncommon Creative Studioの共同創業者であるNils Leonardは「誰かが君のアイデアが盗むのではない。(そのアイデアを実際のクリエイティブに落とし込む)君(の作業)が遅すぎただけだ」と挑発し、「最終的な差を生むのは(アイデア自体よりも)テイストや判断力」であり「何を許し、何を許さないかという判断の一貫性がブランドの競争力になる」という見解が示されました。それは、「ブランドが静的なルールによって規定される時代が終わり、『どこまで変化してよいか』を定めた動的なルール体系によって定義されていく」といいかえることもできるでしょう。そこで必要となるものが、動的なブランディング設計です。動的ブランディング設計の中核となる3つの構成要素そのような変化を前提とした動的ブランディングは、どのように設計されるのでしょうか? 改めてOFFF Barcelonaでの事例を踏まえて整理すると、見えてくるのは次の3つの要素です。第一に「生成ルール」: これは、AIや自動生成の仕組みに与える、変化の許容範囲です。具体的には、ブランドのシンボルや哲学、禁止事項などの不変の核と、色調やモチーフの振れ幅、参照データの範囲などの可変領域を明確に分け、プロンプトや参照データセットとして実装します。Uncommon Creative Studioの「Cultured」が示したように、生成条件さえ正しく設計されていれば、アウトプットが毎回異なったとしても、ブランド自体が揺らぐことはないといえるでしょう。第二に「モーション言語」:これは、ブランド固有の「動き方」の定義です。イージングの質感、速度、リズム、トランジションの作法が、ロゴやカラーと同じくブランドのパーソナリティを伝える重要な要素となります。The Screenのメインタイトルが、変化し続けるタイポグラフィの中でも一貫した世界観を保つことができた理由は、動きのトーン&マナーがしっかり規定されていたからなのです。第三に「インタラクション」: これは、ユーザーの操作や環境に対して、ブランドがどう応答するかを定めたルールです。SomniaLabが身体と建築の「触れ方」を設計したように、タップへの反応速度や気配の返し方は、ブランド体験の記憶を左右することになります。これらの3つの要素に共通する視点は、「一貫性」という言葉が持つ意味の更新にあたるでしょう。つまり、「常に同じ見た目であること(同一性)」から、「どんなに変化しても同じ判断基準から生まれているとわかること(変化の再現性)」への移行です。生成AIとモーション表現の時代においては、このような新たな一貫性が重要になると考えられます。動的ブランディング設計では、これらの3つの構成要素が重要となる。 タッチポイントへの応用そうした新たな一貫性を、日々のブランド運用に応用するとどうなるでしょうか?たとえば、SNSでは、投稿ごとにビジュアルを変えつつも、生成ルールをテンプレートとプロンプトの形で運用に組み込むことで「らしさ」が保たれます。映像広告では、媒体や尺が異なってもモーション言語を共通化することで、15秒のTVCMと長尺のブランドムービーから同じパーソナリティを感じられるでしょう。UIでは、ボタンの反応やローディングといった個々の細かなインタラクションに共通のモーション言語を実装することで、日常的な操作の中でブランドを体験させることが可能になります。このような観点から、これからのブランド戦略を考えると、まず、ブランディングのガイドラインが「動き」と「変化の範囲」を定義しているかどうかをチェックする必要が出てくるでしょう。生成AI時代のガバナンスと失敗パターン一方で、OFFF Barcelonaでは動的表現の落とし穴も語られました。失敗の典型は、大きくわけて2つ存在しています。1つ目は「変化しすぎて一貫性が失われるケース」です。具体的には、生成AIの出力を制御するためのプロンプト設計が不十分なために、ブランドイメージが曖昧なものとなってしまいます。AIブランドガバナンスの欠如が、出力結果にそのまま表れてしまうのです。2つ目は「ノイズ的な表現に意味が伴わないケース」です。これは、派手なモーションや生成されたエフェクトがブランドの思想や哲学につながらないまま、単なる面白さやインパクトとして消費されるパターンといえます。OFFF Barcelonaでは、動的表現の落とし穴として、代表的な失敗パターンが2つ指摘された。デザインスタジオのForealの講演では、生成AIの話題で持ちきりの会場で、あえて「スケッチ」という原始的な手法に触れながら、「ツールがいくら進化しても、(クリエイターの)テイストや直感、粘り強さを置き換えることはできない」と結論づけました。つまり、生成AIなどを活用して表現の自由度を最大化しながらも、出力結果の意味づけや判断は人間が行うことが大切なのです。動的ブランディングの成否は、そのバランスがしっかり設計できているかどうかにかかっている、と考えてよいでしょう。動的ブランディングを設計・運用するパートナー動的ブランディングの設計や運用には、ブランド戦略はもちろん、モーションやビジュアルの制作力、そして生成AIの実装知見という異なる能力を統合して適用することが必要です。しかし、多くの企業にとって、それを自社単独で担うのは容易ではありません。アマナは、約半世紀にわたって企業のビジュアルコミュニケーションを支援してきた知見のうえに、生成AIをブランド運用に組み込むソリューション「AI Creative Architecture」を展開しています。その中核となる「らしさAI」は、光、色、構図などを含むブランド表現を構造化することによって、ブランドらしさを表現するパラメータや生成ルールを設計可能にした技術です。さらに、生成物がブランドの基準を満たしているかを客観的に評価・選別するスコアリングの仕組みも導入しており、これは、ここで述べてきた動的な生成ルール設計やブランドガバナンスの考え方とも重なる仕組みです。さらに、AI専門組織である「A³|amana AI Architects」は、アートディレクターやフォトグラファー、CGアーティストなどのクリエイターと、AI技術やデータマネジメントに精通した専門家によって構成され、ブランド固有の美意識をAIに翻訳する基盤設計から、グラフィックやムービーの制作、PoC、ガイドライン整備、リスクマネジメントまでを一気通貫で支援する体制を整えています。これからの動的なブランディングを見据え、自らも積極的に挑戦していこうとする企業にとって、変化し続けるブランド体験を共に設計し、運用するパートナーでありたい。アマナは、そう考えて、人の感性と生成AIのスピードや再現性を組み合わせながら、「ブランドらしさ」を守りつつ表現の可能性を拡張する、新しいクリエイティブ基盤の構築を支援しています。文・図版:大谷和利 アマナのAI関連記事ロケか、生成AIか、融合か――生成AI時代の映像制作における「意思決定」のルールCreative Tech London 2026|生成AI活用の勝敗を分ける「運用力」とは生成AI時代のブランドガバナンス設計|ガイドライン・承認フロー・C2PAを実務視点で解説AI関連広告が約4分の1。2026年スーパーボウルCMに学ぶ「良手・悪手」と使いどころ『生成AI × ブランディング』事例に見る成功と失敗の境界線
本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。「伝わるはずのメッセージが届かない」ーーその原因は表現力ではなく、受け手の脳の仕組みにあるかもしれません。本書はカズオ・イシグロ『日の名残り』の執事スティーブンスを例に、人が自分の都合よく現実を書き換える「コントロール理論」を解説します。顧客やターゲットへのコミュニケーション設計を考えるうえで、受け手の脳がどう動いているかを知るヒントになります。~本コンテンツは、書籍『ストーリーテリングの科学』(ウィル・ストー著、府川由美恵訳・フィルムアート社刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第1回/全3回)。No.2:人の性格は「育った環境」と「持ち物」に現れるーーブランドコミュニケーションに使える人間理解の視点(8月12日公開予定)No.3:「誰の視点で語るか」で、伝わり方は変わるーー文化によって響く物語が異なる理由(8月13日公開予定)カズオ・イシグロの名高い小説『日の名残り』には、スティーブンスという名でしか呼ばれない大邸宅の誇り高い執事長が登場し、読者は彼の歪んだ欠点だらけの神経領域へといざなわれる。自分の世界とそのコントロール方法の中核となるスティーブンスの信念は、驚異的な能力を持つ執事だった父親、スティーブンス・シニアから受け継がれたものだ。息子のスティーブンスは自分の職務に情熱を燃やし、父や、父と同じように偉大な執事たちの「特別な資質」について思いをめぐらせる。「品格」の鍵となるのは「感情の抑制」だと彼は考える。イギリスの風景の美しさが「表面的なドラマやアトラクションのなさ」によって引き立つのと同じで、偉大な執事は「外部の出来事にはーーそれがどれほど意外でも、恐ろしくても、腹立たしくてもーー動じ」ないのだと(*1)。感情の抑制こそ、イギリスで最高の執事が育つ理由だ。「大陸の人々が執事になれないのは、人種的に、イギリス民族ほど感情の抑制がきかないからです(*2)」。大陸の民族、そしてその点ではケルト人も、「少し挑発されただけで上着もシャツも脱ぎ捨て、大声で叫びながら走り回る(*3)」。感情の抑制は、スティーブンスの世界の神経モデル構築において中枢となる概念であり、彼のコントロール理論でもある。それに忠実に従えば、自分の環境を巧みにあやつり、望むもの、つまり有能な執事という評判を手に入れることができる。この誤った信念がスティーブンスを定義づけている。それが彼なのだ。スティーブンスのように、欠点を濃縮した緻密さで自分の内に宿している登場人物こそが、もっとも忘れがたく、親近感を感じさせ、魅力的な存在となれるものなのだ。イシグロのこの作品は、スティーブンスの誤った現実認識がいかに彼に害をもたらしてきたかを、静かに、しかし残酷に暴きだす。もっとも胸が締めつけられるのは、スティーブンスが屋敷でおこなわれる重要な会合のために指揮を執っている晩に展開される場面だ。屋敷の2階では、長年の務めからついに体を壊して倒れた老父が、ようやく意識を取り戻したところだ。職務に没頭していたスティーブンスは、父に会うよう説得される。事態の深刻さを察したのか、スティーブンス・シニアは、感情の抑制という自分の鉄鎧を捨て、自分が良い父親だったことを願うと息子に伝える。息子はぎこちなく笑うしかない。「父さんの気分がよくなって、何よりです(*4)」と息子は言う。父は息子に、おまえを誇りに思うと伝える。そしてさらにこう続ける。「お前にとっても、わしがよい父親だったならいいが……。そうではなかったようだ(*5)」「父さん。いま、すごく忙しいのです。また、朝になったら話しにきます(*6)」と息子は答える。その夜遅く、スティーブンス・シニアは卒中を起こす。彼は死の淵に立たされた。息子はふたたび父に会うよう説得されたが、またしても仕事に戻らなければならないと言い張る。階下では、彼の雇い主のダーリントン卿が異変に気づく。「なんだか、泣いているように見えたぞ(*7)」と彼は言う。スティーブンスは慌てて目尻を拭い、笑ってみせる。「申し訳ございません。今日一日の緊張のせいだと存じます(*8)」。その後まもなく父は亡くなるが、スティーブンスはそのときも多忙で付き添えなかった。「父も、いま私に任務を果たしてもらいたいと望んでいるはずです(*9)」と彼はメイドに言う。そして、それが正しいことに疑いを抱きもしない。この一連の場面の素晴らしさーーその心理学的な真実味ーーは、スティーブンスにとってはこれが恥ずべき後悔の記憶ではなく、勝利の記憶であるということだ。実際、イギリスでもっとも偉大で品格ある執事の殿堂に列せられたいと思うのなら、これは彼の売り文句となる。「悲しい思い出にもかかわらず、今日、私はあの夜を振り返るたびに、いつも大きな誇らしさを感じるのです(*10)」とスティーブンスは言う。彼の幻影的な現実モデルは、感情の抑制を重視する価値観を中心に成り立っていた。それは、人がいかに世界をコントロールするべきかについての彼の脳の理論の、核心にあるものだった。そして少なくともスティーブンス自身は、それを見事にやり抜いた。スティーブンスの神経世界は歪んでねじ曲がっていたが、それでもミスター・Bと同じく、彼もそれが完全に正しいことを示す根拠を周囲のいたるところで目にしていた。スティーブンスの現実モデルとそのコントロール理論は、結局のところ機能していたのである。感情の抑制の神聖な価値を信じていたからこそ、スティーブンスはキャリアと地位を築き、父親を失う痛みから自分を守ることもできた。イシグロの小説は、人の欠点とその副次的影響についての、真実の探求だーーサルマン・ラシュディも言うように、これはスティーブンスがいかにして「自分の人生を築き上げてきた信念によって破滅させられた」かという物語だ。神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、「人間を真に描写するための唯一の方法は、その不完全さを描写することだ」と述べている(*11)。われわれが物語や人生で出会うのは、まさにこの不完全な人間だ。ただし人生とは異なり、物語は人々を登場人物の心の中に招き入れ、理解させることができる。超社会的に飼い慣らされたわれわれ人間にとって、他者の因果関係、つまり人がそのような行動をとる〝理由〟ほど興味をそそるものはない。とはいえ、物語が与えてくれるのはそれだけではない。頭蓋骨の真っ暗な円蓋に、自分の幻影的宇宙の孤独に永遠に閉じ込められている人間にとって、物語とはちがう世界へのポータルであり、幻影の中に存在する幻影でもあり、そこから脱出できる可能性にもっとも近いものなのだ。 *1;カズオ・イシグロ『日の名残り』土屋政雄訳、早川書房、2001年、42頁および61頁*2;イシグロ『日の名残り』61頁*3;イシグロ『日の名残り』62頁*4;イシグロ『日の名残り』140頁*5;イシグロ『日の名残り』140頁*6;イシグロ『日の名残り』140頁*7;イシグロ『日の名残り』153頁*8;イシグロ『日の名残り』153頁*9;イシグロ『日の名残り』155頁*10;イシグロ『日の名残り』161頁*11;The Power of Myth, Joseph Campbell with Bill Moyers (Broadway Books, 1998) p. 3.[ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ『神話の力』飛田茂雄訳、早川書房、2010年〕(この記事は第1回/全3回)No.2:人の性格は「育った環境」と「持ち物」に現れるーーブランドコミュニケーションに使える人間理解の視点(8月12日公開予定)No.3:「誰の視点で語るか」で、伝わり方は変わるーー文化によって響く物語が異なる理由(8月13日公開予定)▼書籍紹介人は物語によって他者とつながり、ときに対立もしながら、社会を形成してきた。本書は脳科学・心理学の知見をもとに、なぜ人は物語を求めるのか、すぐれた物語はいかに脳を刺激するのかを解き明かす。プロット重視の従来的な物語理論とは対照的に、キャラクターとその〈欠点〉をストーリーテリングの中心に据え、共感を生む物語の仕組みを徹底解剖。小説・映画にかぎらず、マンガ、ノンフィクション、ビジネスシーン、日常の雑談まで、すべての〈物語の語り手〉に読んでほしい一冊。全世界15万部突破。▼書籍情報書名:ストーリーテリングの科学 脳と心をひきつける物語の仕組み著者:ウィル・ストー訳者:府川由美恵出版社:フィルムアート社発売日:2025年12月26日https://www.filmart.co.jp/books/978-4-8459-2414-1/この記事もよく読まれています会議を減らしても、なぜ忙しさは変わらないのか?仕事で直面した困難な状況を解決する「4つの回避術」とは何か「ゼロからつくる」を疑え——既存資産を「ずらす」リブランディングの実践的視点なぜ人は「物語」に共感するのか?ブランド価値を生むナラティブの力なぜ、いま「デザインとは何か」を問い直すのか——成果につながるデザイン、つながらないデザインの違いAI時代に仕事を奪われる人、価値を生み出す人の決定的な違い文・編集:桑原勲
このような方にオススメです生成AI・AIエージェントを導入したものの、PoCや一部部門止まりで全社展開に課題を感じているIT推進・DX推進部門の責任者の方経営層からAI活用の推進を求められているが、社内の推進体制・役割の置き方を模索している方ツール導入後の利用率が伸び悩み、現場に定着させる仕掛けを探している方ベンダー任せ・情シス任せではなく、事業部門を巻き込んだAI運用のあり方を検討している方
コミュニケーション変革をクリエイティブで実現する株式会社アマナ(本社:東京都品川区、代表取締役:金子剛章、以下「アマナ」)は、当社所属フォトグラファーの水木が、『コマーシャル・フォト』2026年8月号(7月15日発売・玄光社)の連載「SHOWCASE」に掲載されたことをお知らせいたします。掲載概要『コマーシャル・フォト』の連載「SHOWCASE」は、注目の若手フォトグラファーの作品を紹介する特集です。今号ではカラー4ページにわたり、水木の作品7点をはじめ、仕事の紹介やインタビュー、プロフィールが掲載されています。商品撮影を軸にキャリアを重ねながら、広告写真の中に自身の感覚をどうにじませるかを探る水木の魅力が、余すところなく伝えられています。フォトグラファー水木について水木は、学生時代に写真部に入部したことをきっかけに写真の道を志します。2022年にアマナへ入社。曽根原健一氏に師事したのち、2026年よりフォトグラファーとしての活動を開始しました。現在はプロダクト撮影を軸に活動し、飲料や化粧品などのシズル表現においても、ブレやボケを絶妙なバランスで扱うことで、広告写真としての高い精度と情緒的な余韻の両立を大切にしています。また、臨場感とともに女性らしい上品さや抜け感が残る表現を得意としています。水木 プロフィール:https://www.amana-visual.jp/photographers/mizukiコマーシャル・フォトについて「コマーシャル・フォト」(玄光社)は、広告業界や商業写真の最新トレンドを取り上げる月刊誌です。連載「SHOWCASE」では、注目の若手フォトグラファーの作品とインタビューを通じて、彼らの視点や技術を紹介しています。
コミュニケーション変革をクリエイティブで実現する株式会社アマナ(本社:東京都品川区、代表取締役:金子剛章、以下「アマナ」)は、新たなメディア事業としてDOOH(Digital Out of Home、デジタルサイネージを活用した広告媒体) サービス「aVISION」を開始したことをお知らせします。aVISIONは、生活者の日常導線上にクリエイティブを実装し、 記憶に残るブランド体験を創出するDOOHプラットフォームです。第一弾として、中目黒・広尾エリアのカフェ空間に設置した屋内DOOHの運用を開始しました。今後は新宿三丁目への展開に加え、屋外大型ビジョンの展開も予定しています。「aVISION」についてaVISIONは、アマナが長年培ってきたクリエイティブコミュニケーションの知見を活かし、企業のブランドメッセージを生活者の日常空間へ届けるために開発したDOOHサービスです。現在主流となっている屋外DOOHは、駅前や街頭などで多くの人へリーチできる一方、接触時間は限定的です。一方、aVISIONの第一弾として展開する屋内DOOHは、カフェ空間という長時間滞在する環境を活用しています。平均滞在時間約60分の空間で広告と接触することで、ブランドメッセージとの自然な接触機会を創出し、 認知獲得だけでなくブランド理解や記憶定着の促進を目指します。また、アマナの強みである企画力・クリエイティブ制作力を活かし、広告枠の提供にとどまらず、コンテンツ制作から配信設計までをワンストップで支援します。今後は新宿三丁目エリアへの展開に加え、屋外大型ビジョンの開発・展開も予定しており、企業と生活者をつなぐ新たなコミュニケーションの場としてaVISIONの展開を進めてまいります。展開概要■ 展開場所【第1弾】・セガフレード・ザネッティ 中目黒店・セガフレード・ザネッティ 広尾店【今後の展開予定】・セガフレード・ザネッティ 新宿三丁目店(2026年9月予定)・屋外大型DOOHメディア(開発中)■ 特徴・平均滞在時間約60分のカフェ空間・中目黒、広尾、新宿三丁目など感度の高いエリアで展開・ブランド理解やブランディング施策に適した媒体設計・クリエイティブ制作からメディア活用まで一気通貫で支援
コミュニケーション変革をクリエイティブで実現する株式会社アマナ(本社:東京都品川区、代表取締役:金子剛章、以下「アマナ」)は、公式YouTubeチャンネルを開設し、新たな映像コンテンツ「amana INSIGHTS presents SENSE ORIGINS ~感性の起源~」の配信を開始します。 MCには️TENDRE氏を迎え、初回配信は、7月9日(木)12時~を予定しています。初回は、MC・TENDRE氏インタビュー動画を公開します。今後は映画監督の堤幸彦氏、歌舞伎俳優の尾上右近氏、映画監督の山下敦弘氏らをゲストに迎え、順次配信していく予定です。 「amana INSIGHTS presents SENSE ORIGINS ~感性の起源~」は、アマナ公式YouTubeチャンネルで展開する映像コンテンツシリーズです。クリエイターや表現者の"感性の起源"に迫るトークコンテンツを配信予定です。ミュージシャンや写真家、アーティスト、デザイナーなど、多彩なゲストを迎え、それぞれが選ぶビジュアルをきっかけに、創作の原点や価値観、表現に込めた思いをひも解きます。 MCには、クリエイティブシーンで活躍するTENDRE氏を迎え、ゲストの感性や思考を引き出します。初回配信では、番組のMCを務めるTENDRE氏へのインタビューを公開し、本シリーズに込めた思いや見どころをご紹介します。 開設の背景生成AIをはじめとするテクノロジーの進化により、誰もがコンテンツを生み出せる時代となりました。その一方で、人の心を動かし、記憶に残る表現には、クリエイター一人ひとりの感性や視点がこれまで以上に重要になっています。アマナはこれまで、写真・映像をはじめとしたビジュアルコミュニケーションを通じて、多くの企業やブランドのクリエイティブを支援してきました。今回開設するYouTubeチャンネルでは、完成した作品だけでなく、その背景にある思考や価値観、創造のプロセスに焦点を当て、クリエイティブに関わる方々はもちろん、ブランド担当者やマーケティング担当者など、新たな発想や視点を求める方々へ向けて、創造性のヒントとなるコンテンツを発信していきます。 amana INSIGHTS presents SENSE ORIGINS ~感性の起源~について番組タイトルである「SENSE ORIGINS(感性の起源)」には、「人の心を動かす表現は、どのような経験や価値観から生まれるのか」という問いが込められています。ゲストが自ら選んだ写真や作品、印象的なビジュアルなどを手がかりに、その人ならではの感性や創作のルーツをひも解きます。作品の裏側だけではなく、表現者としての考え方やブランドづくりにもつながる視点を掘り下げることで、視聴者に新たな気づきやインスピレーションを届けます。今後の配信予定出演ゲストには、映画監督の堤幸彦氏、歌舞伎俳優の尾上右近氏、映画監督の山下敦弘氏の出演を予定しています。※配信日時や公開順は変更となる場合があります。 【公式YouTubeチャンネル】https://www.youtube.com/@amana_inc【初回配信日時】2026年7月9日(木)12:00~(毎週木曜日配信予定)【初回動画】MC・TENDRE氏インタビュー:https://www.youtube.com/watch?v=fuluB4nkfeY&feature=youtu.be MC:TENDRE(テンダー)氏 プロフィール河原太朗のソロ・プロジェクト。Chara、堀込泰行、Original Love、SIRUPといったアーティストへの楽曲提供・プロデュース、コラボレーションなどを行う他、CMナレーションやラジオ番組のナビゲーター、ドラマの劇伴も手がけるなどその活動は多岐に渡る。2025年に3年ぶりのニュー・アルバム『TENDRE』をリリース。
コミュニケーション変革をクリエイティブで実現する株式会社アマナ(本社:東京都品川区、代表取締役:金子剛章、以下「アマナ」)は、先日開設した公式YouTubeチャンネルで展開する映像コンテンツシリーズ「SENSE ORIGINS(感性の起源)」にて、第1弾ゲストとして映画監督・堤幸彦氏を迎えた特別対談(全3回)の配信を開始します。 第1回では、「感性の起源(Sense Origins)」をテーマに、堤氏が自身を象徴する3枚のビジュアルを切り口に、創作の原点、現在、そしてこれから目指す表現について語ります。作品だけでは見えてこない、表現者としての思考や価値観に触れられる内容となっており、クリエイティブに携わる方はもちろん、新たな発想や視点を求めるビジネスパーソンにも、創造性を見つめ直すきっかけを届けます。「センスとは、気が付くとそこにいるもの。」第1回では、「センスとは、気が付くとそこにいるもの。」印象的な言葉とともに、堤氏が自身を象徴する3枚のビジュアルを紹介しながら、それぞれにまつわるエピソードや創作の原点を語ります。時代や技術が変化しても変わらない表現者としての姿勢や、創作との向き合い方、これから挑戦したい表現について語る姿からは、作品だけでは知ることのできない価値観や思考に触れることができます。全3回で、堤幸彦氏の創作と表現の本質に迫る本シリーズは全3回で配信します。第2回では、代表作『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『20世紀少年』などを題材に、作品づくりの裏側や映像演出、音楽との関係、そしてAI時代における表現者の価値について語ります。第3回では、「堤幸彦らしい表現」についてや、これまで壊してきたルールや挑戦し続ける理由、最新作への思いなど、現在もなお進化を続けるクリエイターとしての姿に迫ります。全3回を通して、一人の映画監督としてだけではなく、一人の表現者としての思考や哲学をひも解いていきます。 【公式YouTubeチャンネル】https://www.youtube.com/@amana_inc第1回:感性の起源 ― 3枚のビジュアルから創作の原点を語るhttps://www.youtube.com/watch?v=Wn5TDpAdVFM第2回:代表作から紐解く作品づくりとAI時代の表現論第3回:「堤幸彦らしさ」と、挑戦し続ける理由※毎週木曜日12:00配信予定 amana INSIGHTS Presents「Sense Origins」感性の起源番組タイトルである「SENSE ORIGINS(感性の起源)」には、「人の心を動かす表現は、どのような経験や価値観から生まれるのか」という問いが込められています。ゲストが自ら選んだ写真や作品、印象的なビジュアルなどを手がかりに、その人ならではの感性や創作のルーツをひも解きます。作品の裏側だけではなく、表現者としての考え方やブランドづくりにもつながる視点を掘り下げることで、視聴者に新たな気づきやインスピレーションを届けます。ゲスト:堤幸彦氏 プロフィール 映画監督・演出家。『TRICK』『SPEC』『20世紀少年』『池袋ウエストゲートパーク』シリーズなど数々の話題作を手掛ける。独自の映像表現と演出で、映画・ドラマ・舞台など幅広いジャンルで活躍している。MC:TENDRE(テンダー)氏 プロフィール河原太朗のソロ・プロジェクト。Chara、堀込泰行、Original Love、SIRUPといったアーティストへの楽曲提供・プロデュース、コラボレーションなどを行う他、CMナレーションやラジオ番組のナビゲーター、ドラマの劇伴も手がけるなどその活動は多岐に渡る。2025年に3年ぶりのニュー・アルバム『TENDRE』をリリース。