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旭化成|50年続く交換膜事業の思想をブランドへ。AlkaNexusが組織の共通言語

旭化成|50年続く交換膜事業の思想をブランドへ。AlkaNexusが組織の共通言語
Update

50年続く交換膜事業の価値を、いかに社内外へ伝わるブランドとして再定義するかーー。

市場環境の変化を受け、新たな価値提供への転換を進めていた旭化成交換膜事業部。しかし、その思想や目指す姿を社内外へどう伝えていくかが課題となっていました。

本プロジェクトでは、パーパス・ミッション・ビジョンの策定からネーミング、ロゴ開発、ブランドガイドラインの構築、ブランドムービー制作までをアマナが支援しました。

事業の思想をどのようにブランドへと昇華し、組織の共通言語として浸透させていったのか。交換膜事業部 マーケティング部 部長の片岩建志さんと、プロジェクトマネージャーの小島秀太さんに話を伺いました。

 

インタビューダイジェスト動画もご覧ください。

 

1.新ブランド「AlkaNexus」を立ち上げた背景

ビジネスモデルの転換期に問い直した、自分たちらしさ

――今回のプロジェクトでのご担当範囲と取り組みの概要を教えてください。

小島秀太さん(以下、小島。敬称略):今回のプロジェクトで私たちは、新ブランド「AlkaNexus(アルカネクサス)」の開発と浸透を進めております。交換膜事業は50年ほどの歴史がありますが、大きなビジネスモデル転換の節目にあたって、新しくブランディングを始めようとこのプロジェクトを立ち上げました。私は交換膜事業部マーケティング部で、ブランド開発におけるプロジェクトマネージャーを務めております。

片岩建志さん(以下、片岩。敬称略):私は現在、マーケティング部の部長をしていますが、当時は営業のマネージャーをしていました。営業の立場から、このブランドづくりという取り組みに携わってまいりました。

 

片岩建志|Takeshi Kataiwa 旭化成株式会社 交換膜事業部 マーケティング部 部長。
片岩建志|Takeshi Kataiwa
旭化成株式会社 交換膜事業部 マーケティング部 部長。2012年に旭化成株式会社へ入社。他事業で営業担当を経験したのち、17年よりイオン交換膜食塩電解事業に関わる。同事業内の事業企画、営業を経て2024年より同職。現在は事業におけるブランディングやプロモーションコンテンツの他、生産、販売向けの施策立案を指揮する。同部署内では、DX施策の立案、サポートも担当し、事業経営において多様な視点をもちながら、旭化成 交換膜事業の魅力をより多くの人に届けることを目指している。

 

――ブランディングに取り組むきっかけは何でしたか?

小島:転換点となったのは、カナダの子会社であるRecherche 2000社の買収と、新型コロナウイルス感染症の拡大です。事業環境が大きく変化する中で、この局面をむしろ将来像を見つめ直す機会と捉え、あるべき姿について議論を重ねました。従来の技術要素を一社で提供できる強みに「カスタマーサクセス」という概念を取り入れ、買収した子会社のモニタリング・ソフトウェア分析機能や当社のアフターサポートと組み合わせることで、複合的なワンストップソリューションという事業の方向性が定まってきました。

ただ、お客さまの課題に基づいた提案を矢継ぎ早にお伝えしていたため、「結局これを集めるとどうなるの?」という疑問が生じ、全体像が伝わらない状況が続いていました。折しも競合他社も類似した動きを見せ始めており、思想の異なる競合と同一視されることへの危機感が、ブランディングへ取り組む判断につながっていきました。

――社内でブランディングを推進するにあたって、どのような壁がありましたか?

片岩:当時は「そもそもブランドとは何か」「BtoBブランディングはどう進めるべきか」というところから考え始めなければならない状態でした。営業の立場としては、「旭化成が本質的に目指していることは何か」をお客さまにシンプルに伝えたいという思いはあるものの、社内への浸透も含めてどのように発信していくべきか、組織としての課題であると同時に、私自身の課題でもありました。

 

小島秀太|Shuta Kojima 旭化成株式会社 交換膜事業部 マーケティング部 マーケティンググループ 課長代理。
小島秀太|Shuta Kojima
旭化成株式会社 交換膜事業部 マーケティング部 マーケティンググループ 課長代理。2016年に旭化成株式会社へ入社し、交換膜事業部に配属。同事業の海外営業、事業企画を経て、前身組織であるカスタマーサクセス室マーケティンググループの創設メンバーとして同グループに異動となる。マーケティンググループでは、事業企画時代に参画したビジネスモデル転換プロジェクトの中期経営計画・実行計画策定、新ブランド「AlkaNexus」の立ち上げ、クラウドソフトウェアサービスのマーケティング戦略・戦術立案を実施。現在は、サーキュラーエコノミー系新規サービスの事業開発を推進する。

 

2.パーパス・ミッション・ビジョンの整理から始まったブランド開発 

組織に共通していた「寄り添う心」を形にする

――パーパス・ミッション・ビジョンを整理するワークショップでは、どのような議論が印象に残っていますか?

片岩:事業に携わるメンバーが「我々の仕事の本質は何か」「お客さまに何を提供したいのか」を改めて議論する機会はこれまでほとんどありませんでしたが、ワークショップを通じて、驚くほど方向性が一致していることが確認できました。特に「寄り添う」というキーワードが、事前の調整なく複数のチームから自発的に挙がってきたことは印象的であり、組織としての一体感を改めて実感する場となりました。

一方で、その共通概念をワークショップ内で視覚化する段階になると、チームごとに表現は様々でした。「この多様なイメージを、最終的にどうひとつの言葉やロゴに集約するのか」——当時は正直、自分の中でクリアにならないまま、不安を抱えながら進めていたというのが実情です。

 

「AlkaNexus」ブランドガイドラインより|PURPOSE(存在意義)MISSION(提供価値)VISION(目指す世界観)
「AlkaNexus」ブランドガイドラインより|PURPOSE(存在意義)MISSION(提供価値)VISION(目指す世界観)

 

――「AlkaNexus」というブランド名には、どのような想いや未来への意志が込められていますか? また、数ある候補の中で、この名前の採用に至った背景を教えてください。

小島:「AlkaNexus=ワンストップソリューション」と捉えられることもありますが、それは提供価値の一部に過ぎません。このブランド名には、当事業のパーパスとビジョンが凝縮されており、ミッション以外の部分と特に結びつきが強いブランド名になっています。

前半の「Alka」は、クロルアルカリ産業を今後100年、そしてその先まで守り続けるというパーパスに由来しています。後半の「Nexus」は、1社では解決困難な課題も、皆で協力・連携することで解決へと導くというビジョン「つながり・絆」を表しています。また、旭化成の略称「AK」を想起させるAとKが自然に含まれている点も、この名称を選んだ大きな理由のひとつです。社内での意見集約においても、最も支持を集めた候補でした。

 

「AlkaNexus」ブランドガイドラインより|ロゴ:横組
「AlkaNexus」ブランドガイドラインより|ロゴ:横組

 

――ロゴのデザインにはどのような世界観や思いが込められているのでしょうか?

小島:当初は幾何学的で視覚的なインパクトの強いデザイン案にも魅力を感じましたが、ブランドに込めた思想を突き詰めていくと、「ひとつにつながる」というコンセプトを直感的に連想させる形状が適切だという結論に至りました。ロゴに円形を採用したのはそのためです。加えて、アマナさんより、日本の「禅」の思想を取り入れたデザインであるとご説明いただきました。日本企業として世界のクロルアルカリ産業を支えていくという当事業の使命と合致していると感じたことが、最終的な採用の決め手となりました。

 

旭化成交換膜事業部公式サイトより(https://chlor-alkali.asahi-kasei.co.jp/about/)|禅の円相(始まりも終わりもなく角に引っ掛かる事もない淀みのない円の動き)とつながりを表すNexusの“N”を組み合わせ、AlkaNexusが好循環を生み出していく様子を表現
旭化成交換膜事業部公式サイトより|禅の円相(始まりも終わりもなく角に引っ掛かる事もない淀みのない円の動き)とつながりを表すNexusの“N”を組み合わせ、AlkaNexusが好循環を生み出していく様子を表現。

 

3.現場の熱量を映し出したブランドムービー

製造現場を巻き込み、ブランドを「自分事」にする

――完成したブランドガイドラインは、現在社内でどのように活用されていますか?

小島:ブランド確立後、名刺へのロゴ掲載やステッカー・グッズの制作を通じて早期に露出を高めましたが、ルールなき展開はブランドイメージを損なうリスクがあります。特に、旭化成のコーポレートカラーである「旭化成BLUE」と「AlkaNexus BLUE」は微妙にトーンが異なるため、色の使い分けやアイソレーションのルールを定めたガイドラインを、主にグッズ制作の際の判断基準として活用しています。

一方で、活動の拡大に伴いガイドラインと実態が乖離するケースも生じてきました。使いづらいからという理由だけでブランドの浸透が止まってしまうのは避けたい。そのため、実態に即した形でガイドラインを柔軟に改定していく方針です。アマナさんとも継続的に連携しながら、運用の最適化を図っていきます。

――ブランドムービーの制作において、特に重視された点について教えてください

片岩:ミッションである「寄り添う心」と「ワンストップソリューション」を明確に発信するとともに、製品・サービスだけでなく「それを生み出す人材」にフォーカスを当てることを重視しました。

2025年の「旭化成交換膜事業50周年記念カンファレンス」での上映を想定していたため、お客さまと接点のある営業・テクニカルサービスのメンバーに加え、普段は表に出ない製造現場の社員にも出演していただき、価値が届くまでのプロセスをシンプルに伝える構成としています。社内からは「やってみたい」「かっこいい」といったポジティブな反応が多く寄せられました。

また、ムービー制作の過程を通じて「自分たちの仕事はお客さまにとって何なのか」を改めて考えるきっかけとなり、社員一人ひとりの自分たちの仕事を捉え直すきっかけにもつながりました。撮影を通じて普段接点の少ない部門同士が互いの業務を知る機会にもなり、普段接点の少ない部門・社員同士が、お互いを知る機会にもなりました。

 

「AlkaNexus」ブランドムービーより|これまでは表に出る機会がなかった製造工場にて撮影した。現場の社員が交換膜の製造ラインに向き合う姿を描いたシーン

 

――当初は立ち入りが難しかったという「延岡」や「川崎」の工場での撮影が実現したそうですが、現場の反応はいかがでしたか?

小島:製造現場は操業を絶対に止められない心臓部であるため、外部撮影チームの受け入れには手続き上の障壁や現場の抵抗感もあったのです。しかし、単に事務的に進めるのではなく、ブランド設立の背景や目指す姿を現場に丁寧に説明し、納得してもらうことを大切にしました。

撮影が始まると、これまでブランディングとは縁遠い立場にあった製造現場のメンバーが、AlkaNexusを身近なものとして捉えるようになっていきました。ものづくりへの強い意識を持つ現場だからこそ、ひとつのコンセプトに向けて映像制作に取り組む過程で、ブランドへの親近感と仲間意識が自然と芽生えていきました。撮影を契機に、現場から「こういったグッズを作れないか」という自発的な提案が上がってくるようにもなりました。

特に印象的だったのは、出演した現場社員が「子どもに映像を見せ、自分の仕事を説明できた」と喜んでくれたことです。仕事の枠を超えて、自身の誇りやモチベーションにつながったという声を聞いて、やってよかったと感じました。

 

4.インナーブランディングから組織文化の醸成へ

ブランドを行動指針へ。「AlkaNexusらしい働き方」を育む

――「AlkaNexus」立ち上げ以降、事業部内のコミュニケーションやブランドへの意識はどう変わりましたか?

片岩:当初は「AlkaNexusとは何か」という認知すらない状態であり、現地現物を重視する製造業の文化において「ブランド」という概念は受け入れられにくく、「マーケティングの仕事」「本社の取り組み」という印象を持たれていたことも事実です。

しかし、ブランドムービーをはじめとする活動に多くのメンバーが関わることで、ブランドを「自分事」として語る社員が徐々に増え、良い影響が事業全体に波及し始めています。自分の仕事を言語化する上でも役立ち、「AlkaNexusの理念にふさわしい、自分らしい働き方とは何か」を自発的に問い直すフェーズへと移行しつつあると感じています。ロゴという形だけでなく、ムービー制作という体験を通して可視化されたことが、社員一人ひとりの内側から問いを引き出したのだと思っています。

――今後、「AlkaNexus」をどのようなブランドへ育てていきたいですか? また、そのために予定している取り組みがあれば教えてください

片岩:社外のお客さまや業界関係者、サプライヤーの皆さまに対しては、AlkaNexusの理念を通じて、旭化成の交換膜事業がどのような世界観を共に作っていきたいかを感じていただける拠り所でありたいと思っています。「AlkaNexusなら安心・信頼できる」と言っていただけるブランドとして確立していきたいと考えています。

社内に対しては、製品の作り方や日々の働き方における行動指針として機能させていく方針です。その具体的な施策として、パーパス・ミッション・ビジョンを体現した社員を称える表彰制度の導入を検討しています。「この働き方こそが目指す姿だ」と皆が感じられるような仕組みを作ることで、組織文化の醸成とブランドの浸透につなげていきたいと考えています。
 

P1001616.png

 

旭化成交換膜事業部による「AlkaNexus」の取り組みは、事業の思想を言語化し、組織全体で共有していくためのブランド開発プロジェクトでした。ワークショップからネーミング、ロゴ開発、ブランドガイドラインの構築、ブランドムービー制作までを通じて、ブランドは単なるシンボルではなく、社員一人ひとりをつなぐ共通言語として浸透し始めています。

アマナはこれからも、企業の理念やビジョンに向き合いながら、人と組織をつなぐブランド体験の創出に取り組んでいきます。

 

クライアント/スポンサー:旭化成株式会社

<スタッフクレジット(全てアマナ)>

アカウント:吉田愛、門間笑
クリエイティブプロデューサー:江藤一臣、小松崎実香
プランナー:鈴木陸、杉山諒
アートディレクター:鳥居真雄
ムービープロデューサー・プロダクションマネジャー:有井大智
ムービープランナー:鈴木陸
ムービーディレクター:山中祐貴(株式会社isai)
Webプロデューサー:小松崎実香
Webディレクター:藤岡裕佑
デザイナー:鳥居真雄
コーダー:足利政紀

取材・文・撮影:BeeDot

 


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