交通広告グランプリ2026受賞作品に見る最新トレンド──広告枠の外まで、クリエイティブを広げる

この記事でわかること
- 交通広告グランプリ2026で注目したい5つの受賞作品と、そのクリエイティブの特徴
- 2025年からさらに進んだ、場所や媒体の特性を生かす交通広告のあり方
- 「媒体から発想する」「人がそこにいる理由を捉える」「その後の行動まで考える」に見る3つのクリエイティブトレンド
電車内や駅構内などの交通メディアを対象に、優れた広告作品を顕彰する「交通広告グランプリ」。第38回となる2026年は、2025年4月1日から2026年3月31日までに対象媒体へ掲出・放映された1,798点が審査され、グランプリを含む38作品が選出されました。
前年のアマナインサイトでは、駅や車両を単なる掲出場所ではなく、「体験を伴うブランド接点」として生かす作品に注目しました。
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2026年の受賞作を見ると、その流れはさらに進んでいます。広告を媒体にどう載せるかだけではなく、交通広告を取り巻くさまざまな条件そのものを企画に生かす動きが見えてきました。
本記事では、注目したい5つの受賞作品を紹介しながら、2026年の交通広告から見えてきたクリエイティブの変化を読み解きます。
交通広告グランプリ2026 注目受賞作品
1.Uber Eats Japan「寒い冬こそ、Uber Eats で、いーんじゃない? 重ね着篇/暑すぎる夏も、Uber Eats で、いーんじゃない? 溶ける篇」
グランプリ
広告主:Uber Eats Japan合同会社
展開媒体:ADトレイン・中づり貸切

2026年のグランプリに選ばれたのは、Uber Eats Japanによる車両広告です。冬と夏、それぞれの季節に合わせ、「外に出たくないほどの寒さ/暑さ」を車内空間へ持ち込みました。
冬の「重ね着篇」では、半透明のフィルムなどを用いて、車内が寒さで結露したような光景を演出。夏の「溶ける篇」では、Uber Eatsのブランドカラーである緑色の広告物が、暑さで溶け出しているような立体表現を展開しています。
テレビCMでも、身の回りのものまで暑さで溶けていく世界を描き、「こんな日は外へ出ずUber Eatsを使おう」という利用シーンを表現。交通広告では同じ発想を引き継ぎながら、その舞台を乗客自身が過ごす車内へ移しました。
特徴的なのは、サービスの利便性を言葉で説明するのではなく、「今日は外に出たくない」という利用動機そのものを空間にしたことです。
一定時間を過ごす車内だからこそ成立する表現によって、乗客が広告を見る状況までUber Eatsの価値へとつなげています。
2.大丸松坂屋百貨店「大丸松坂屋百貨店 新VI「百様図」企業広告」
駅メディア部門 最優秀部門賞
広告主:株式会社大丸松坂屋百貨店
展開媒体:駅ポスター(パノラマ東京)

出典:日本デザインセンター「大丸松坂屋リブランディングプロジェクト」
大丸松坂屋百貨店の新たなVI(ビジュアルアイデンティティ)「百様図」を発信した企業広告です。交通広告グランプリでは、駅ポスター「パノラマ東京」での展開が最優秀部門賞に選ばれました。
大丸と松坂屋は、全国15店舗がそれぞれ異なる地域に根差してきた百貨店です。リブランディングを手掛けた日本デザインセンターは、こうした特徴を「本店のない百貨店」と捉えました。
「百様図」は、大丸を想起させる円と緑、松坂屋を想起させる四角と青をベースに、円形や四角形の色紙を幾層にも重ねて構成されています。色紙を1枚動かすだけで異なる図柄が生まれ、多様な価値観が重なり合うというブランドの考え方を視覚化しました。
このVIは全国15店舗や店舗周辺の駅、地域新聞など、地元の顧客の目に触れる場所へ展開されています。受賞作となった駅広告も、そうしたリブランディング全体の接点の一つです。
共通するブランドの考え方をつくりながら、それぞれの店舗が根差す地域へ届けていく。VIそのものだけでなく、「どこでブランドと出会うか」まで含めて展開した点が印象的です。
3.アディダス ジャパン「YOU GOT THIS(大丈夫、いける。)世界最速体験サイネージ」
空間プロデュース部門 最優秀部門賞
広告主:アディダス ジャパン株式会社
展開媒体:新宿ウォール456
出典:SPACE MEDIA公式YouTube「【新宿】JR東日本 新宿ウォール456 adidas」
新宿駅東西自由通路に設置された大型サイネージ「新宿ウォール456」を舞台に、陸上選手Noah Lylesの疾走を描いた作品です。
新宿ウォール456は、横幅45.6mの横長デジタルサイネージ。約45mの画面で、Noah Lylesが200mを駆け抜ける姿を展開しました。
この作品で目を引くのは、単なる画面の大きさだけでなく、「45.6mという圧倒的な横長形状」の活かし方です。
広告媒体のサイズや形は、通常であれば制作時に対応すべき条件として捉えられます。この作品では逆に、「45.6mある」という媒体固有の条件から表現を組み立てています。
広告を大きく見せるために大型サイネージを選ぶのではなく、その形だからできる表現を考える。トップアスリートのスピードや疾走感と、媒体そのものの形状を結びつけた作品です。
4.Mrs. GREEN APPLE「Mrs. GREEN APPLE アニバーサリーベストアルバム「10」プロモーション CD聴こうよ。」
メディアプロモーション部門 最優秀部門賞
広告主:ユニバーサルミュージック合同会社
展開媒体:ADトレイン+車体広告/駅ポスター

出典:Mrs. GREEN APPLE公式サイト「期間限定でラッピングされた山手線が走ることが決定!」
Mrs. GREEN APPLEのメジャーデビュー10周年を記念したベストアルバム『10』のプロモーションです。
『10』は、Mrs. GREEN APPLEにとって2年ぶりとなるCD作品。ストリーミングサービスで音楽を聴くことが当たり前になった中、制作チームが考えたのは、アルバムの魅力だけではなく「CDを聴くという体験自体を広告する」ことでした。
山手線では1編成をラッピング。車内では、メンバーがCDの聴き方を紹介する特別映像を放映しました。キャンペーン全体では、渋谷をはじめとする街や駅にも「CD聴こうよ。」のメッセージを展開しています。
アルバムの発売を知らせ、広告を見てもらうだけではありません。その先でCDを手に取り、プレーヤーに入れ、音楽を聴く。広告に触れた後に起こる行動までを、プロモーションの一部として捉えています。
デジタルで音楽を聴くことが当たり前になった時代だからこそ、交通広告というリアルな接点から、実際にCDを手に取って聴く体験へ誘う。メディア環境の変化そのものを企画の理由にした作品です。
5.三菱UFJ銀行「エムット ローンチプロモーション」
JR東日本賞
広告主:株式会社三菱UFJ銀行
展開媒体:新宿ウォール456/新宿BBB/ADトレイン+車体広告/J・ADビジョン

出典:SPACE MEDIA「三菱UFJフィナンシャル・グループ『エムット』、木村拓哉さんらを起用し新宿駅をサイネージジャック」
MUFGが2025年6月に始動した金融サービスブランド「エムット」。そのローンチを、駅や車両など複数の交通媒体を横断して展開したプロモーションです。
新ブランドを印象的に立ち上げるために着目したのが、多くの人にとって日常生活の一部であり、自然に広告と接触する「駅」でした。
新宿ウォール456、新宿BBB、ADトレイン+車体広告、J・ADビジョンなどを活用し、駅から車両まで幅広く展開。従来の金融広告にある堅い印象を避け、新しい金融サービスとの出会いに意外性や期待感を持たせるクリエイティブを展開しました。
特徴は、個々の広告枠だけを見て企画していないことです。
駅で出会い、電車でも目にし、大型サイネージでも接触する。日々の移動の中で新しいブランドとの出会いを重ねることで、「エムット」という未知のブランドを印象づけています。
一つの広告だけで完結させるのではなく、交通広告を、新ブランドとの出会いを重ねるための一連の接点として捉えた作品です。
交通広告グランプリ2026に見る3つのクリエイティブトレンド
前年の交通広告グランプリでは、駅や車両を単なる掲出場所ではなく、「体験を伴うブランド接点」として生かす動きが見えてきました。
2026年の受賞作からは、その流れがさらに広がっていることがうかがえます。広告空間をどう演出するかだけでなく、媒体そのものの特徴、そこにいる人の状況、広告に触れた後の行動まで、企画の対象が広がっています。
そこには、「媒体から発想する」「人がそこにいる理由を捉える」「その後の行動まで考える」という3つの方向性が見えてきます。
1.「媒体に合わせる」より、「媒体から発想する」
交通広告には、サイズや形状、設置場所など、媒体ごとにさまざまな条件があります。広告表現を考えた後、それぞれの仕様に合わせて展開することも少なくありません。
2026年の受賞作から見えてくるのは、そうした条件を制約として処理するのではなく、アイデアの起点として捉える姿勢です。
媒体の長さや形、車両という空間、駅や路線が持つ特徴。その媒体がどのような特徴を持ち、そこで何ができるのかを考えることで、広告表現そのものが変わっていく。
「この表現を、どう媒体に収めるか」ではなく、「この媒体だから、どんな表現が生まれるか」。媒体そのものが、クリエイティブの発想源になっています。
2.「人が多い場所」より、「人がそこにいる理由」を捉える
交通広告の価値は、多くの人が行き交う場所で接触できることだけではありません。
通勤や通学、買い物、旅行、帰省など、人はそれぞれ異なる目的や状況の中で駅や電車を利用しています。同じ広告でも、どのタイミングで、どのような気持ちの人が見るかによって、その意味は変わります。
2026年の受賞作からは、人数や属性だけではなく、「その人がなぜ今そこにいるのか」まで捉えてコミュニケーションを考える動きが見えてきます。
人が集まる場所を選ぶことから、その場所にいる人の行動や気持ちを読み取ることへ。場所と人の文脈まで含めて考えることが、交通広告ならではのクリエイティブにつながっています。
3.「その場の体験」より、「その後の行動」まで考える
広告を見て驚く、足を止める、その場で参加する。交通広告では、広告との接触そのものを豊かな体験に変える表現が広がってきました。
2026年の受賞作からはさらに、広告に触れた後に何が起こるのかまでを視野に入れた企画が見えてきます。
商品を手に取る。Webで詳しく知る。家に帰って何かを確かめる。広告に触れた瞬間をゴールにせず、その後の日常で起こる行動まで考えることで、コミュニケーションの範囲は広がります。
「どうすれば見てもらえるか」だけではなく、「見た後に何をしてほしいのか」。交通広告と生活者との接点を、その場限りで捉えない視点が、クリエイティブの対象を広告枠の外へ広げています。
媒体の特性を、ブランド体験へつなげる
受賞作から見えてきたのは、広告表現だけでなく、媒体を選ぶところから広告に触れた後までを、一つのコミュニケーションとして考える広がりです。
こうした考え方を自社の施策に置き換えたとき、「自社のブランドに合う場所はどこか」「その環境だからこそ、どんなコミュニケーションができるのか」を見つけることが重要になります。
アマナが展開する「aVISION」は、カフェを中心としたリラックス空間に大型ディスプレイを設置する滞在空間型のDOOHメディアです。平均約60分という滞在時間など、その場所ならではの特性を生かし、ブランド認知だけでなく、商品やサービスへの理解、検討までを促すことを目指しています。また、DOOHの放映だけでなく、空間ジャックやサンプリング、コラボメニューなど、店舗全体を使った施策にも展開できます。
さらにアマナでは、マス広告、Web、アプリ、OOH、イベントなど、多様なチャネルに合わせたプロモーションを、プランニングからアウトプット制作まで一気通貫で支援しています。
自社のブランドにとって、どこで生活者と出会うことに意味があるのか。その場所で何を伝え、その先にどのような行動を生み出したいのか。
媒体とクリエイティブを切り離さずに考えることで、ブランドと生活者との新しい接点が見えてくるのではないでしょうか。
アマナのサービス:
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