モビリティCGにハイクオリティは必要か?【後編】AI時代に人がCG制作を行う理由

今日、さまざまな業界でCGを活用することは、もはや当たり前のこととなっています。もちろんモビリティ業界でも大活躍。CGなくして、自動車に関連するさまざまなビジュアル制作はかなわない時代になりました。
「モビリティCGにハイクオリティは必要か?【前編】」に続き、デザインジャーナリスト/自動車評論家で日本自動車ジャーナリスト協会理事を務める千葉匠さんと、モビリティCG制作を専門に行うアマナの「croobi(クロオビ)」チームのリーダーでCGクリエイターの坂本直樹、アマナのプロデューサーの鈴木健哉の3名で、AI時代のCG制作について語りました。
「croobi」の作品リール。
より自然な表現を目指せる、現在のCG
――自動車メーカー内のデザイン部門と広告部門の関わり方や、自動車メーカーと「croobi」の関わり方はどのように変化していますか?
鈴木:デザインへのフィードバックという観点では、「croobi」では、広告分野だけではなくて、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)の分野での協業も始めています。ハイクオリティな制作によってフィードバックするというよりは、モビリティ業界内でCGを用い得る分野での広がりという面もあります。自動車と運転者との接点がどんどんディスプレイ化されていますが、まだ企業側でも手探りの分野なので、コンセプトを作るところなどを協力しています。HMIの分野は内製化したいというクライアントの要望もあるので、それを目指した協力体制を作っていますね。
「croobi」の作品リールより。
先ほどのハードウェア・ソフトウェアの高性能化に対しては、こういったことも組み込めるようになってより自然なアウトプットを目指せるようになった、という例でもありますね。

鈴木健哉|Kenya Suzuki
株式会社アマナ/プロデューサー。90年代後半からCGデザイナーとしてキャリアをスタートし、ゲーム、映像、広告業界を経験して現在に至る。約20年前から携わる自動車CG案件のディレクション、プロデュースを得意とし、その領域は、静止画、映像、などの既存のコンテンツから車載GUI/HMI、CADセットアップ、自動車コンフィギュレーター、webGL、バーチャルプロダクションなどのリアルタイムCGまで多岐にわたる。
画像生成AIとモビリティCGの共創はあり得るのか
――オープンソースソフトウェアのお話がでましたが、制作という面では生成AIの急激な進化も気になります。
千葉:カーデザイン開発では、初期段階でデザイナーたちがアイデアスケッチを何百枚も描きます。商品コンセプトがあっても、それをどう表現するかはさまざま。また、あるコンセプトに対して、自分がどのようなものを「よいもの」と考えているのか、自社ブランドに対してどのようなデザインが適していると考えているのかなど、デザイナー自身の思考は描いてみないと確認できない。だからたくさんのスケッチを描くわけなのですが、そこで画像生成AIを利用してプロンプトに基づいたアイデアをさまざまに提示させれば、最初の「自分は何を正解と考えているのか」に対する方向づけを効率化できると思っています。広告制作では生成AIをどう活かせるのでしょう? クルマの背景画像をAIに生成させたら、ロケ撮影よりそのクルマに適した背景を得られるかもしれない。カーデザインの現場では、そんなトライも始まっているようです。

千葉匠|Takumi Chiba
千葉大学工学部工業意匠学科でデザインを学び、商用車デザイナー、デザイン専門誌の編集者を経て、89年からフリーランス。「デザインのより良き理解の浸透」をモットーに、「デザインには意味がある、カタチにはワケがある」と説く。2018年に都心から千葉の郊外に転居し、愛車ロードスターでクルマ生活を楽しんでいる。日本自動車ジャーナリスト協会理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

坂本直樹|Naoki Sakamoto
株式会社アマナ/CGI統括マネージャー。90年代後半からCGデザイナーとしての仕事を始め、以後TV-CMを中心にWEB広告、イベント映像、リアルタイムコンテンツ等さまざまなメディアのCG制作に関わる。
――思ってもいなかったアウトプットに触れる可能性がある一方、結局、自分で描いた方が正解にたどり着くのが速いという可能性もあるということですね。
坂本:ツールの中でAIが活用されるということは今でもありますよね。ツールを使っている人がAIを意識しないようなところでAIが使われているケース、例えば自動車に乗っている人の性別や年齢、外見のバリエーションをデータとして一気に100人の人物を作る、というようなことは直近のAIの活用として想像しやすいですよね。一方で、たとえば今はスマホの登場で誰でも撮影ができる時代になりましたが、プロのフォトグラファーが不要になったわけではありません。では、画像生成AIがCG制作工程すべてを肩代わりできるようになった時の、プロとしての「croobi」ができることは何だろうということは考えなくてはいけないと思っています。
鈴木:作業については、どんどんコンピューターに任せる、AIに任せることができるようになっていくと思うんですね。では何がカッコいいとか、何が美しいとかをAIが判断するのか、もしかしたら判断できるのかもしれないですけど、「クリエイティブなところ」については人がより時間をかけることに意味があるという状況になるのではないかと。
千葉:制作する、手を使って描くということをAIが肩代わりするようになり、人がそうした作業をやらなくてよくなった時に、人は「カッコよさ」であったり「これがよい/悪い」という判断ができるかは疑わしいですよね。人間って、手を動かさないと頭も動かないんです。手を動かして得る経験は、生成AIの時代になっても大事。そこを忘れてはいけないと思っています。
取材・文:秋山龍(合同会社ありおり)
編集:大橋智子(アマナ)
撮影:松栄憲太(アマナ)
AD:中村圭祐
撮影協力:海岸スタジオ







