アートディレクター永瀬由衣さんが追求する、自分らしい“透明感”

印象的なグラフィックで支持を集めるデザインオフィス・れもんらいふ。同社で活躍する永瀬由衣さんはアーティストのアートワークや広告ビジュアルを手がけ、独自の世界観を築いています。彼女が制作の合間に足を運ぶという水族館で、絵作りへのこだわりやインスピレーションの源について伺いました。
印象的なビジュアルをつくるアートディレクターに憧れて
——永瀬さんは学生の頃ファッションを勉強されていたそうですが、そこからアートディレクターを志すようになったきっかけを教えてください。 永瀬由衣さん(以下、永瀬。敬称略):もともと大好きだったアーティストのYUKIさんの衣装を作りたくてファッションデザイナーを目指し、女子美術大学のファッション科に入りました。入学後、卒業生でアートディレクターの野田凪さんと吉田ユニさんの作品を見たときに、「この魅力的な作品をつくる職業は何だろう」と衝撃を受け、あとからアートディレクターという職業を知りました。中でも、凪さんがディレクションされたYUKIさんのCDジャケットを見て、自然と“YUKIさんの衣装をつくる”という夢から、“YUKIさんのCDジャケットをつくる”という夢に変わっていきました。
<PROFILE>永瀬由衣|Yui Nagase 1991年生まれ、東京都出身。女子美術大学ファッションテキスタイル表現領域卒業。大学在学中に株式会社れもんらいふのインターンを経験。'14年新卒で入社。デザイナーとしてさまざまなプロジェクトに携わる。'16年夏、SHE IS SUMMER「LOVERY FRUSTRATION E.P.」にてアートディレクションを担当。以降、CDジャケット、広告、空間ディレクション等、ジャンルを問わず活動中。
「LUCUA EXPO~LUCUA osaka 4th Anniversary~」ビジュアル。
「LUCUA EXPO~LUCUA osaka 4th Anniversary~」ビジュアル。
特に、撮影をお願いした磯部昭子さんとは同じ方向を一緒に目指せる方。彼女が作り出す豊かな色彩と立体的な色合いや構図が理想的なんです。好きなものが一緒なこともあってイメージも伝わりやすく、絵作りの相談がしやすいです。ルクアの現場はスタッフ全員の呼吸が合っていて、磯部さんもすごく楽しかったと言ってくださったことが、とても印象的でした。
制作に関わる人々が同じイメージを持つ現場作り
——広告制作のお仕事と並行して、永瀬さんは音楽アーティストのビジュアルも多数手がけられていますよね。アーティストの魅力、作品の魅力を表現するために考えていることはありますか? 永瀬:そのとき発売するアルバムなど、作品ごとのコンセプトだけでなく、アーティストそのもののコンセプトを大切にするようにしています。一緒に仕事をするうちに、アーティスト本人の表現したいことや、事務所側の制約のボーダーラインもわかってくるんです。そういったアーティストと関係を築く中で知った、守らなければいけないところは崩さないようにします。 中でも、学生の頃からの友人であるMICOちゃんの音楽プロジェクト・SHE IS SUMMERのビジュアル作りは少し特殊ですね。デビューのときからアートディレクションを担当しているのですが、MICOちゃんは旅行をしたりして、さまざまなことを吸収してくる人なので、一緒に作品をつくるたびにマイブームが違うんです。MICOちゃんとつくるときは、まず旅の話を聞いたり、お互いにはまっているものを話したりするところからスタートします。
永瀬さんが手がけたSHE IS SUMMERのビジュアルの数々。
ファーストミニアルバム『hair salon』発売時のアーティストビジュアル。
『TRAVEL FOR LIFE』表紙ビジュアル。
永瀬さんが撮影も担当したというタイでのショット。信頼関係のある永瀬さんだからこそ撮れる、生き生きとしたMICOさんの姿が写し出されています。
自分らしい、“透明感”を求めて
——ご自身で思う、自分らしいテイストとはどのようなものですか? 永瀬:そうですね、学生の頃は好きな広告を参考にしていたので、いざ自分がディレクションする案件が来たときは悩みました。真似は真似にしかならないので……。でも、悩みながらも作ってきた作品を振り返って共通していたのは、“見た人がそこに1つでもストーリーを感じられるような作品が作りたい”という想いです。あとは色に対して強いこだわりがあって。 ——こだわりというのは? 永瀬:たとえばBSテレ東のドラマ「まどろみバーメイド」のビジュアルを作ったときは、「夜の青」と「バーテンダーの白と黒」という単調な色の中に、差し色として赤・青・黄色のカクテルを入れました。でも、それだけだと単なる色彩構成のようなペタッとした絵になってしまうと思ったので、カメラマンの磯部さんと相談して、フィルターを使って紫の光を入れました。こういった感じで細かい色の調整にこだわっています。
BSテレ東ドラマ「まどろみバーメイド」のビジュアル。
——水族館の他には日々どのようなことからインプットをしていますか?
永瀬:映画が好きなのですが、できるだけ映画館で見るようにしたり、舞台やミュージカルもよく見に行きます。あと、時間がなくて動けないときはInstagramからインプットします。気になったアカウントはジャンルを問わずにどんどんフォローして、気になるものがタイムラインに流れると、片っ端から保存して見返しています。







