ジャクエツが取り組む、未来価値をつくるデザインのかけ算

CDO(Chief Design Officer)の吉田薫さんを、アマナのクリエイティブエバンジェリスト・児玉秀明が訪ねました。
あそびの専門家集団がつくる、共創コミュニティ
児玉:クレヨンやハサミから園舎の設計まで、ジャクエツさんの手掛けるものは幅広いですよね。「PLAY DESIGN LAB」には、プロダクトデザイナーの深澤直人さんや、アフォーダンス研究者の佐々木正人さんなど、錚々たるクリエイターや専門家の方々が参加されていますが、この取り組みはどういう経緯で始められたのでしょうか?
ジャクエツが深澤さんと手掛けた遊具「OMOCHI」。丸みを帯びたフォルムに登ったり滑ったり、全身で形状を体感するように“つい遊んでしまう”つくりになっている。(提供:ジャクエツ)
そんな思いから、2004年に「D- Plan(デザイナープラン)」としてプロジェクトを立ち上げ、それが今の「PLAY DESIGN LAB」につながっています。
吉田 薫 | Kaoru Yoshida 1978年ジャクエツ入社。関東エリアでの営業店長を経て、ユニフォーム部門、顧客のCIをデザインする部門の事業部長に。2009年に企画開発担当部長に就任し、数々の新商品開発やデザイナーとの共同開発を推進。現在は、常務取締役兼CDOとして、デザインの力を活用した取り組みを進めている。
その後、佐藤さんから深澤さんをご紹介いただいたり、多くの方からいろんなご縁をいただきながら、ビジョンに共感してくれる方々と取り組みを進めています。
児玉:思いが重なると、知見も人も集まりやすいですよね。まさに“かけ算”。プロダクトの開発や園舎の建築設計以外にも、デザインを活かした取り組みはあるのでしょうか?
児玉 秀明 | Hideaki Kodama 多摩美術大学卒業。1980年マッキャン・エリクソン博報堂(現マッキャン・エリクソン)入社。フリーランスデザイナーを経て、1990年にアマナグループの前身であるアーバンパブリシティに入社。長らくアマナグループのコーポレートブランディングや次世代クリエイター育成に従事するほか、企業ビジネスにクリエイティブの力を活かしていくためのノウハウを伝える活動を続ける。
「こども環境サミット」では、ジャクエツの新商品発表の場にあわせて、多彩なトークを開催。2019年開催時には、教育経済学者の中室牧子さんや、世界的なマクロビオティック料理家・西邨マユミさん、神社を舞台にしたアートプログラムで注目を集める太宰府天満宮権宮司・西高辻信宏さんなど、さまざまな分野からスピーカーが集まった。
ジャクエツの考える「こども相関図」。子どもが育つ環境を、あらゆる視点から考察し、アイデアをつなげていく。
(提供:ジャクエツ)
大正5年、いろがみづくりからスタートしたジャクエツ
児玉:今年で105周年を迎えられたわけですが、「子どもたちのために」というキーワードは創業当時からあったのでしょうか? 吉田:ジャクエツはもともと、創業者の徳本達雄が、大正5年に福井県敦賀市に設立した早翠(さみどり)幼稚園で使用する教材を自前で開発・製造したことから始まっています。まだ幼稚園が少ない時代、当時23歳で浄土真宗の住職だった創業者が、“日本のアンデルセン”と呼ばれた児童文学者・久留島武彦さんに影響を受けて開園しました。
ジャクエツの「いぬはりこ」マークは、子どもの守り神「犬張子」をモチーフに、久留島武彦が敦賀を訪れた際に描いたものがもとになっている。久留島は「桃太郎主義」という児童教育観を掲げ、桃太郎が自分と異なる犬、猿、雉と仲良くなって力を合わせて困難を乗り越えていくように、互いの違いを認め合って共に生きていこうという考え方を提唱。伝統を未来に受け継ぐべく、2019年にグラフィックデザイナーの佐藤卓さんにより現在のかたちにリデザインされた。
1Fには歴代の製品がアーカイブされ、2Fには本社の開発チームが集結。アイデアを工場エリアですぐにプロトタイプに起こせる環境が整っている。
外壁には、コンセプチュアル・アーティストのローレンス・ウィナーによる作品が描かれ、工場内にもさまざまなアーティストの作品を展示。働く人にとっても刺激的な環境の中で、日々新たな「あそび」が生み出される。
(提供:ジャクエツ)
活動の意味を言語化し続けることで、文化は育まれる
児玉:ジャクエツさんの企業文化として、「社員一人ひとりの人格的成長が会社の発展を生む」という儒教的な考え方が垣間見えます。社内のコミュニケーションで心がけていることはありますか? 吉田:我々は、「子どもたちの未来のために」という目的のもと、クレヨンから遊具、園舎まで扱っているので、一見何の会社かわかりづらいんです。それを日頃から社員も意識して考えることが重要で、今自分がしている仕事は何なのか、ジャクエツとはどんな存在なのかを表現し、言語化していくことは大切にしています。
ジャクエツのものづくりを一枚絵で表現した「エントリーブック」。ビジュアルで直観的に認識でき、会社案内資料として活用されている。
全社員が携帯するクレド。「私たちの使命」の横にはその年の努力目標が記され、開いた中面には行動指針・行動規範が記載されている。
子どものためのモノをつくるメーカーから、「あそび」を通して未来をつくる企業へーー。時代に応じて形を変えながら創業時の思いを受け継いできたジャクエツ。 事業や組織の姿かたちが変わっていくと、自社は果たして何屋なのか、ビジョンなきままに競争力を失っていく企業もあるでしょう。 「かけ算」で広げ、「言語化」で立ち返る先をつくるというジャクエツの取り組みは、一人ひとりの社員が目の前の仕事と社会との関係性を意識し、その集合体として企業文化を育んでいくことを考えるうえで、一つのヒントとなりそうです。
撮影[top]:広光(UN)
レタッチ[top]:カワノミオ(amana)
AD[top]:片柳 満(amana)
撮影[interview]:Kelly Liu(amana photography)
文・編集:高橋 沙織(amana)








