LOADING

航空法の改正で何が変わる?
ドローン撮影のいまと、これから

ドローン撮影の現場や、今回施行が決定した改正航空法がドローン撮影に今後及ぼすとされる影響について、株式会社スタジオアマナでドローン撮影などの特殊機材を扱う「airvision/エアビジョン」の代表、横濱和彦氏にうかがいました。

2015.10.16

#1 INSPIRATION


現場のプロフェッショナルに問う。ドローン撮影のメリットと、今後の問題点。

自由度の高い動きや室内での撮影に対応するなど、ヘリや飛行機による空撮と比べて、また違った魅力のあるドローン(無人航空機)撮影。コスト面でも比較的安価なことから、主に映画や広告のムービー撮影において用いられる機会も増えてきました。2000年代中頃には個人撮影が可能な小型で手頃な製品も市販されるようになり、その名は広く一般にも知られるように。
 しかし、昨今のドローンの急速な普及により、新たな産業やサービスの登場が期待される反面、安全面における懸念も高まりつつあるのは事実。そこで、今年2015年の7月、国の国土交通省は緊急的な措置として、基本的な飛行ルールの設定や安全を確保するために必要な措置として、航空法の一部を改正する法律案を提出しました。この改正航空法は、9月に参院本会議において全席一致で可決・成立し、年内の施行が予定されており、これまで農薬散布に用いられてきた農業用無人ヘリをはじめ、ドローン撮影の現場においても、大きな影響が出るとされています。
 そこで、ドローン撮影の現場や、今回施行が決定した改正航空法がドローン撮影に今後及ぼすとされる影響について、株式会社スタジオアマナでドローン撮影などの特殊機材を扱う「airvision/エアビジョン」の代表、横濱和彦氏にうかがいました。

エアビジョンの誕生とドローンの急速な普及

「日本でドローンを用いた撮影が本格的に普及してから、まだ10年も経っていません。エアビジョンも、2012年にスタートしたばかりの新しいプロジェクトです。キッカケは2011年に、ドローン撮影に関する新聞記事を目にしたことでした。興味を持ってすぐに実物を見に行ったのですが、当時の製品は空中での静止がむずかしく、モーターの振動も大きかったことから、繊細な撮影には向かないと一旦諦めました。その後、スイスのプロダクションに密着取材をしたり、海外の製品を取り寄せて比較をしたりと社内で研究を進めるうちに、ドローンに搭載される姿勢制御装置と呼ばれる装置が複数のGPSとの連動で飛躍的に進化し、操作も容易になったことから導入に踏み切りました。それからわずか数年、日進月歩で進化していくドローンの性能に加え、瞬く間に一般の人びとにまで普及したのには、正直驚いています」

 視察にも訪れたスイスのプロダクションが制作した映像のクオリティの高さに加え、製品や撮影技法などを調べるほど、世界的に見ても日本がドローン撮影市場で大きな遅れを取っていると痛感した横濱氏。さらには、わずか5年も経たないうちに百貨店で本格的なドローンが販売されるなど、その驚異的な普及速度には目を見張るものがあったそうです。

ドローン撮影における独自の安全対策

「市販のドローンでも十分に美しい映像の撮影は可能ですが、プロの撮影現場においては、それでは不十分。カメラの性能というよりも、操作性や搭載できる重量などが大きく異なりますから。我々は、フォトグラファーからお預かりしたカメラ機材をドローンに搭載し、指示通り的確に操作する集団です。数百万円という高価なカメラ機材を載せて飛ばすので、緊張するなんてものじゃないですよ(笑)、ミスは許されません。ほとんどの事故は、慌てて落としてしまうといったヒューマンエラーとされています。そのリスクを減らすためにエアビジョンでは、関東にある専用飛行場へ通い、テスト飛行を頻繁に行っています。操作していて不審に感じる部分があったり、新しいパーツを組み込んだりする際は、そこで必ずテストを行う。また、操作中の機材トラブルを体験しておくことは大事なので、シュミレーションをこまめに実施し、パイロットの対応力や判断力を養うことも欠かしません」

 エアビジョンではパイロットの技術向上や機材の細かな点検の他、事故を未然に防ぐための独自のルールを設けて撮影に挑んでいます。たとえば、撮影でドローンを50m上昇させる場合、高さと同じ半径の範囲内の安全確保を行うなど。これまでは法律で具体的なルールが定められていなかったため、安全のためのガイドラインを自主的に設けて実施する必要があったという。

今回の改正版航空法で変わること

ドローンの普及に伴い、今回施行が決定した改正版航空法は以下の通り。これまでに定められていた飛行高度の限定に加え、家屋の密集した地域の上空での飛行や、日中のみの飛行に限定するといったルールが新たに設けられている。


(1)無人航空機の飛行にあたり許可を必要とする空域
 以下の空域においては、国土交通大臣の許可を受けなければ、無人航空機を飛行させてはならないこととする。
 [1] 空港周辺など、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域
 [2] 人又は家屋の密集している地域の上空
 
(2)無人航空機の飛行の方法
 無人航空機を飛行させる際は、国土交通大臣の承認を受けた場合を除いて、以下の方法により飛行させなければならないこととする。
[1] 日中において飛行させること
[2] 周囲の状況を目視により常時監視すること
[3] 人又は物件との間に距離を保って飛行させること   等
 
(3)その他
[1] 事故や災害時の公共機関等による捜索・救助等の場合は、(1)(2)を適用除外とする。
[2] (1)(2)に違反した場合には、罰金を科す。

出典:国土交通省「航空法の一部を改正する法律案について」の概要より抜粋
   http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku02_hh_000083.html

 この改正法の施行により、ドローン撮影の現場に及ぼす影響が出ることは明らか。エアビジョンを始め、業界はどのように対応していくのでしょうか?

「夜間の撮影や市街地での撮影に制限が出てしまうということで、ドローン撮影の表現に制約ができてしまうのは残念なこと。しかし、周囲の状況を目視により常時監視することや、人又は物件との間に距離を保って飛行させるといったことは、法改正の以前より我々が自主的に心がけてきたことなので、特に大きな影響が出るとは考えていません。エアビジョンの場合はアマナグループのソリューションもあるので、建物の肖像権や交通広告への配慮などにも長けていますからね。強いて挙げるとすれば、FPVという一人称視点での撮影ができなくなることでしょうか。遠く離れた位置にいるドローンがどの方向を向いているかを正確に把握することは、肉眼では限界があるので重宝してきましたが、それが使えなくなるということで、解決策を考えなくてはなりません。今後は業界内での情報交換などを通じて連携を強化し、国に対してドローン撮影の条件を、欧米の撮影環境に近づけてもらうための努力をしていきたいと考えています」

横濱 和彦/よこはま かずひこ株式会社スタジオアマナ 取締役 airvision・特殊機材 マネージャー

ドローンによる空撮をはじめ、特殊機材を用いた撮影を専門とする新進気鋭の撮影部隊「airvision/エアビジョン」を率いる。エアビジョンでは大型のドローンを主力とし、高性能な撮影機材を用いた広告撮影や、ドラマのムービー撮影などを担当。国内のドローン撮影の草創期から独自に研究・ノウハウの構築を行ってきたことかた、日本屈指のドローン撮影の先駆として注目を集めている。

[Website] airvision

この事例をシェアする

ドローン撮影サービス関するお問い合せはこちら

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる